用語集 /
性別不合
学術gender incongruence · GI · 性別不一致
性自認と割り当てられた性別が持続的に一致しない状態に対する ICD-11 の呼び名。2019年の採択時に精神障害の章から外され、脱病理化のマイルストーンとなりました。
性別不合は、世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類』第11版(ICD-11、2019年に世界保健総会で採択、2022年発効)が使う用語で、性自認と出生時に割り当てられた性別とのあいだの、顕著で持続的な不一致を記述します。
この言葉のいちばん重要な意味は、それがどこに置かれているかにあります。ICD-11 はこれを「精神および行動の障害」の章から外し、新設された「性の健康に関連する状態」の章に移しました。この配置は慎重に検討された結果です——コードをひとつ残しておくことで、トランスジェンダーの人が受診し、ホルモン療法や手術を利用するときの根拠が保たれ、多くの国では医療保険の対象にもなりえます。同時に、はっきりと宣言してもいるのです。性自認の多様性は精神疾患ではない、と(関連する検証を参照)。これは1990年に WHO が同性愛を疾病分類から外したことと地続きの、トランスジェンダー脱病理化の重要な一歩です。
DSM-5 の性別違和とは力点が異なります。性別違和は顕著な苦痛を核とするのに対し、性別不合は状態そのものを記述し、本人が必ず苦しんでいるとは前提しません。医療的サポートが必要かどうかは、本人と専門家が一緒に判断することです。
語感メモ:学術・公衆衛生・政策文書での標準的な用語です。日常の文脈でも、診断の色合いのない中立的な記述語として使えます。
よくある誤用:「まだ ICD に残っているのだから、やはり病気なのだ」という理解。実際はその逆です——精神障害の章ではなく性の健康の章にあえて置かれたのは、受診と保障のルートを残しつつ、これが疾患ではないと明確にするためなのです。